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サッカーとは、ゴールルートを作る主導権を奪い合う戦い

この章では、これまでもさまざまなところで紹介されたり、議論されているサッカーの基礎知識について、あらためてアプローチしていきます。

いきなりですが、サッカーとは何ですか。皆さんはどのように答えますか? 「人生の縮図」「パッション!」「ボールゲーム」など、さまざまな答えが出てくるでしょう。そのほかの例を、いくつか挙げましょう。 極めて合理的・理論的な国民性で知られるオランダの定義は、客観的な事実に基づき、曖昧な部分がないのが特徴です。オランダの現場で活躍された白井裕之さん

(現・サガン鳥栖アカデミー ヘッドオブコーチング)が書籍の中で述べているサッカーの定義(「サッカーとは何か」と聞いたときに返ってくる答え)を紹介します。

「1つのボール、2つのゴール、 11人ずつの2チーム、制限されたスペース、2つのチームが相対してプレーする方向があり、ゲームを実行するためのルールを守ることによって成り立つゲーム」

私がスペインで通っていたコーチングスクールでも、「サッカーって何なの?一言で答えて」と先生に聞かれたことがあります。私が固まっていたら、その先生は 「戦いだよ、戦い」と言いました。「2チームあるのに、1個しかボールないだろう。 その時点で争いが生まれている」。ということは、サッカー選手はそもそも戦えないといけないことが大前提になります。 では、どんな戦いなのか、私なりに定義しました。「ゴールルートを作る主導権を奪い合う戦い」です。ボールを持っているチームだけ、ゴールまでのルートを作る権 利があります。ルートの作り方はロングボールを使ってもいいし、ドリブルも使ってもいいし、無限にある。けれど、ルートを作れるのはボールを持っている側だけであって、持ってない側はそのルートを遮断し、ボールを奪い返さない限り、自分たちがルートを作ることはできません。

こうした、自分なりの解釈・定義を加えることは非常に大切です。自分ならでは解釈・定義がベースとなり、指導者としての特徴が生まれるのだと思います。

「何をしようかを考えること」が戦術的行為

もう一つ、日本でたびたび耳にする「小学生年代に戦術は必要か?」という問いについて、考察してみましょう。そもそも、戦術とは何でしょうか。この定義が曖昧だからこそ、戦術という言葉に対して、拒絶反応を示しているケースがあるのではないでしょうか。

「戦術」について、スペインのコーチングスクールで共有した定義や、有名なコーチの言葉を紹介します。

・選手のパフォーマンスにおける相互作用と、対戦相手の影響によって生じる理性的な行為

・戦術アクションとは、問題解決を連続して行うこと

・攻撃、守備におけるすべてのアクションであり、ボールに関係したプレーで相手を驚かせる、打ち負かす、対抗する、中和することを指す

・試合中に行う相手を上回るためのさまざまなアクション(個人、グループ)のこと

・メソッドや仕組みによって何かを実行するための行為、または何かを獲得するための行為を戦術と呼ぶ

・問題解決行為であり、状況をみて、何をするか決断すること

・「戦術とは、ゲームである。どうプレーするか? いつプレーするか? どこでプレーするか? どのようにプレーするか?」(フアン・マヌエル・リージョ〔元ヴィッセル神戸監督〕)

・「サッカーは集団スポーツであり、もっとも重要なのは戦術である。技術、メンタル、フィジカルはすべて戦術を遂行するためにある。サッカーとは、競技(スポーツ) であり、遊び(プレー)である。プレーこそ、まさに戦術的インテリジェンスとなる」(フリオ・ガルガンタ〔元ポルトガル代表スタッフ〕)

このようにみると、戦術とは「チームの勝利のために、何を、いつ、どのように、どこでやるか」を、個人・グループ・チームで考えて実行し、共有することだと言えるでしょう。もっとシンプルに言うと、「その状況をみて、何をしようかと考えること」 が戦術的行為なのです。

こうした戦術、あるいは戦術的行為を必要ないとするならば、「試合中に何をしようか、考えなくてもいい」ことになってしまいます。これでは、サッカーをやる意味がないとさえ言えるでしょう。刻一刻と変わる状況の中で、何をしようか考えることこそ、サッカーにおいて最も楽しさを感じる一つだと、個人的には考えています。

これもまた、言葉の定義を考えることによって、サッカーの理解が深まる例と言えるでしょう。

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大切なのは「知覚―判断―実行」

サッカーにおける行動プロセスとして、日本では「認知→判断→実行」という表現が、よく知られています。私は、認知より先に「知覚」が来ると考えています。例えば、 周辺視野で「白いもの」を視界にとらえたとしても、それが何なのかはわかりません。 徐々に視線を白いものに移すことによって、紙なのか、布なのか、プラスチックなのかがわかる。意識しなくても、ぼんやり視界に入っている時点で知覚され、そのあとに認知されるのです。

この「なんとなく視界に入っている状態」が、サッカーでは大事だと考えています。 スペインでも、「知覚→(認知)→判断→実行」というプロセスが一般的です(図4-1)。 さらに細かく考えれば、サッカーに限らず、人は以下のプロセスを意識下、無意識下にかかわらず踏んでいます。 何かの刺激をキャッチし(=知覚/認知)、その刺激がどういうものか捉え(=分析)、それに対してどんな行動をするかを決めて(=判断/決断)、最後に実際に行動を起こす(=実行)。

そして、「経験を積む」とは、これまでの行動を振り返り(フィードバック)、似たような状況と出くわしたときに、予測が立つようになる状態を言います。つまり、分析から決断までのスピードがさらに上がることを指すわけです。

状況を把握した瞬間に、無意識レベルで決断し、実行できる選手は「判断の速い選手」ということになります。

ミスの原因は「実行」が2割、「知覚・判断」が8割

図4-1では、「知覚(認知)」のあとに「判断」が来ていますが、判断では「何をやろう」→「どのようにやろう」という流れで意思決定を行います。これが逆になるケースはありません。

そして、判断のあとに「実行」がきます。この3つのうち、実行だけが現象としてみえますが、知覚と判断は目にみえないのが大きな特徴です。

皆さんは普段の指導で、知覚(みえていたか、みえていなかったか)、判断、実行のどれを最も重視していますか。私もそうでしたが、「実行」の部分ではないでしょうか。 声かけについても「もっとしっかり蹴ろう」「またこんなミスして」などと、本人でもわかっているようなことをあらためて伝えていたりしませんか?

しかし、ミスが起きる根本的な原因は、「実行」ではないケースが多いものです。 スペインのある統計によれば、サッカーで起こるミスのうち、「実行」の部分はわずか20%で、それ以外の80%は「知覚」と「判断」の部分なのです。

つまり、ミスの原因は技術的な問題よりも、頭の中の問題のほうが圧倒的に多い。 しかも、頭の中のミスは、本人が気づいていないことがほとんどです。だからこそ、 指導者は頭の中をみようとすることが非常に大切です。

「今、みえていたの?」「みえていませんでした」「じゃあ、次はみるように意識しよう」

と伝える。「みえていました」と選手が答えれば、「今振り返ってみて適切な判断だっ た?」とか、「次に同じような状況だったらどうする?」と返すようにする。このように、「知覚」「判断」にフォーカスすることは大切ですし、これらの要素に普段からアプローチしていく姿勢が重要だと言えるでしょう。

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3つの状況における みることの基準

前項で、知覚と判断の部分の重要性を述べましたが、実際の育成現場では、「実行」 の部分にフォーカスした練習メニュー、そしてコーチのアプローチが圧倒的に多いのも事実でしょう。「実行」については、「首を振れ!」「周りをみろ!」という声がかけられますが、何を、いつ、みればいいのでしょうか。その基準を、皆さんはお持ちでしょうか? ここでは、試合における「みる」ことの基準をお伝えします。ゴールは固定されているので確認していることを前提にして、試合の状況を3つに分け、それぞれでみるべきものを挙げました。

❶ 自分がボールを持っていないとき→味方、相手、スペース

自分以外の味方や相手がボールを持っているときは、味方、相手、スペースをみるようにします。スペースを認識するには、 10~11歳になって空間認知力や平面上みえないものがみえる力がある程度ついてからになりますが、味方の位置と相手の位置は、しっかりとみて確認する必要があります。

ちなみに、10 ~11歳になる前にスペースの感覚を身につけている選手もいます。 これはあくまで個人的に調べたことですが、こうした特徴を持つ選手には、ある共通点があります。それは、小さい頃から海外のサッカーをよくみているという点です。 保護者の影響を大きく受けていることになりますが、海外のサッカーをみることで、

スペースをイメージしたプレーが表現できる可能性が高くなると考えています。 これについて、「J リーグではダメなのですか?」という質問を受けることがあります。どうせみるのであれば、世界トップレベルの試合をみることに時間を割くことをお勧めします。また、Jリーグの中継はボール周辺のエリアや選手にフォーカ スすることが多く、引いてピッチ全体を映すことが少ないため、試合の全体像を把握しにくいという理由もあります。

❷ 自分にボールが転がってきているとき→相手だけ

ボールが自分のところに転がってきているので、ボールではなく「相手がどこから来ているか」をみます。相手がどこから来ているかさえ認識できれば、ボールを取 られるリスクは下がります。ボールを取られるのは、自分がみえていないところからプレッシャーをかけられたケースがほとんどです。

❸ 自分がボールを持っているとき→アドバンテージのある味方

自分がボールを持っているときにみるのは、「アドバンテージを持っている味方」です。自分よりも、チャンスを作れそうな味方とも言い換えられます。しかし、状況を確認したけれど、誰もアドバンテージを持っていなかったというケースもあるで しょう。それは、ボールを持っている選手が、最も大きなアドバンテージを持ってい ることになります。

3つの状況について述べましたが、理想としては、相手だけをみることであり、味方についてはみなくても把握できている状態です。みる必要があるのは、試合での「不確定要素」——すなわち相手だけになっているのが望ましいです。

その意味では、日ごろの練習は「自分たちは、こういうプレーをしたい。だから、 このとき、お互いのポジションはこうなるよね」というように、チームとしての「確定要素」を増やす作業とも言えるでしょう。

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コミュニケーションに ついて知る

「コミュニケーション」とは?

図4-1では、「知覚」の前に「コミュニケーション」が来ています。補足すると、このコミュニケーションは、言葉によるものだけではありません。

例えば、センターバックの選手で、相手のフォワードをマークしている状況をイメージしてください。そこで、相手が「今から裏取るよ」とは言わないでしょう。フラフラ動きながら、あるいは何も考えていない素振りをみせながら、裏のスペースをねらっているかもしれません。そういった、動きや雰囲気から相手の狙いを察知することも必要であり、これもコミュニケーションの一つと位置づけられています(ノンバーバル〔=非言語〕コミュニケーションと言われています)。

したがって、広い意味でのコミュニケーションがとれない・自分からとろうとしない、相手の考えや狙いを感じ取れない選手は、サッカーに向いていないと言えます。 自分のやりたいことしかやらない選手も同じです。

サッカーは、個人競技ではありません。味方のこと、相手のことを気にかけてプレーできない、味方と連係をとってプレーできなければ、選手としての成長は望めないでしょう。

知覚よりもリフティングのほうが大事?

ちなみに、サッカーにおけるコミュニケーションの重要性を考えると、技術レベルが低くても、顔を上げること(周辺をみて、さまざまなコミュニケーションを基に情報を得ること)にもっと取り組んでもよいのではないか、と考えています。

多くの現場で、「相手のプレッシャーに慌ててしまう」→「技術レベルが低いから、 顔が上がらない」→「周りがみえないのは仕方がない」→「だから、もっとボールを使ってドリル練習をしよう!」という発想の流れになっていないでしょうか。

もし、皆さんが新たな競技を始めようとしたときに、「この競技は、基本的なことを3年間みっちりやらないと、試合を楽しめません」と言われたら、その競技に打ち込む人はほとんどいないでしょう。にもかかわらず、サッカーの中で同じようなことを子どもたちに求めているケースがあります。その典型例が、リフティングです。

「リフティングが〇回以上できないと、試合に出られない」「歩きながらのリフティングで、コートの端から端まで移動できないと、トレセンに選ばれない」などなど、 上述した〝基本的なこと′′を身につけなければ、試合に出場する機会が得られない。 こんなケースを、日本でたびたび目にしました。

もちろん、これが悪いとは言いません。一つの指標としてみるのであれば、有効かもしれません。ただ、リフティングだけが基準になると、あまりに一面的な評価になってしまうと思います。おそらく、現スペイン代表選手でさえも、多くが試合に出られないでしょう。

何を知覚しているかは頭の中にある

先ほども触れましたが、知覚と判断が優れているかどうかは、表に出にくいのが特徴です。一方で、できなかったフェイントができるようになった、リフティングの回数が増えたというのは、「目にみえる」成果としてわかりやすい。すなわち、「努力した」ということがよくわかります。

だからと言って、こうした成果としてみえる部分だけが、サッカー選手としての評価に直結するかといえば、決してそうではありません。前述のように、頭の中で生じている戦術的な要素も重要です(だからこそ、私はサッカーコーチのコーチとして活動しながら、こうした要素にも目を向けてみましょうと伝えています)。

試合において状況がみえていない場合、その選手は、判断すべき材料がほとんどありません。だからこそ、まずは顔が上がったほうがいいわけです。状況をみようとしないと、技術を発揮するところまでいきません。

状況からさまざまなコミュニケーションを通して、選手は何を受け取っているのか(知覚しているのか)。その答えは、選手の頭の中にしかありません。私たちコーチは、それをどうすれば知ることができるでしょうか。お気づきの方もいると思い ますが、ここで「質問」が必要になってくるのです。

頭の中を聞き出すのに1年かかった

非言語によるコミュニケーションの重要性とともに、それを通じて得たものを引 き出す手段として、前項の最後で「質問」をあげました。いわば、言語によるコミュ ニケーションです。選手に質問をするときの注意点として、すでに1章で述べてい ますが、選手が「安心・安全」が感じられていないと、本当のことを答えてくれません。 その例を挙げましょう。

以前、スペインからの帰国直後に日本の育成現場に立っていた私は、選手の意図を知りたくて「今のプレー、何でそうしたの?」と質問してみました。すると、その小学年生の選手は、半ベソになりながら「すみません」と返してきました。私は本当に怒っておらず、ただ単にプレーの意図が知りたかっただけなのです。

人は「何で〇〇したの?」と聞かれると、その行為を否定されているように受け取り、自動的に言い訳を考えてしまう傾向があります。つまり、「自分が悪いことをしてしまった」と認識してしまうのです。

当時の私は、脳科学や心理学を学んでいなかったので、こうした知識を備えていませんでした。コーチから「何でそうしたの?「」何でそうしなかったの?」と聞かれるだけで、選手たちが「悪いことをして怒られる」と認識しているとわかって、本当にショックでした。

この件をきっかけに、「私がプレーの意図を聞くときは、ダメだから、叱責したいからではない。素直にそのプレーの意図が知りたいだけだから、もし考えていなかった場合でも『考えていませんでした』と答えてくれていい」と伝え続けました。

選手たちが「自分の意図はこうでした」と、素直に答えてくれるようになるのに、 それから1年以上はかかりました。これには、日本の教育文化や普段の生活が大きく影響していますが、コーチはこのような、選手の性格や地域性(文化性)にも気を配る必要があると、身をもって感じました。

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サッカーのミスは4つある

この項では、スペインの有名なハンドボールのコーチであるシスコ・エスパール氏という方が提唱した、ボールゲームにおける4つのミスについて紹介します。

4つは、ここまで述べてきた知覚、分析、判断、実行を要因としたものです(表4- 2)。選手のミスの要因は何かと掘り下げるとき、この4つを基準に考えると、根本的な要因と解決策がみえやすくなると考えています。

これから皆さんは、ミスが起こったときに「何でそんなプレーをするんだ!」と感情的になるのではなく(私も以前そうでしたから、気持ちは非常によくわかります)、 根本的な要因は何かと考えていただきたいです。

スペインと日本における 評価基準の違い

サッカーを〝科目〟と見立てると、〝配点〟が高いのは…

「スペイン人はサッカーがうまい」とよく言われますが、その理由は、ここまで述べてきたように、「知覚」や「判断」の〝点数〟が高いからだと考えています。一方で、日本人がうまいと言われるのは「実行(技術)」の〝点数〟が高いという理由にあると思 います。

ですが、サッカーを一つの〝科目〟と見立てた場合、先ほど紹介したミスの割合にもあるように、目にみえる実行(技術)という〝単元〟の配点が低く、目にみえない「知 覚」「判断」という〝単元〟の配点が高いのが特徴です。その中で日本の現場は、極端に言えば、配点の低い〝単元〟(技術)を必死になって練習している状態と言えるでしょう(一方、スペインでは、知覚と判断を重視する傾向が強いのです)。

例えば、「漢字の書き取りが大事なので、うちの塾では漢字の書き取りを反復させること以外やりません」という塾があったとして、保護者の立場だったらどう思うでしょうか。自分の子どもに通ってほしいと思うでしょうか? このような、サッカーにおける客観的な(かつ基本的な)事実を知ることは、非常に大切です。サッカー専門のコーチが必要な理由は、保護者では目にみえない部分にフォーカスできるからであり、この部分についてアドバイスできるからです。ある選手がコントロールをミスした原因は、ポジショニングがよくなかった可能性もある。あるいは、ボールを受ける位置が悪くて、相手のプレッシャーを受けて焦ってしまったから、ということも十分に考えられるのです。

サッカーは頭で始まり、足で終わる

多くの日本人の問題点の一つとして、テクニックがスキルになっていないことが挙げられます。テクニックとは、相手の存在に関係なく発揮する技術のことで、スキルとは相手やスペースなどの状況判断を伴った技術のことです。 当然、技術における正確性も大事ですが、判断の質(速さや正確性)が非常に大事になってきます。状況をみて、0.5秒かかってプレーを決断する選手と、0.2秒で決断する選手では、後者のほうが優れた選手だと言えます。さらに、判断の正確性 (数ある選択肢の中から最適なプレーを選ぶことができる)が伴っていると、なおさら優れた選手だと言えるでしょう。 これまで繰り返し述べてきましたが、以上の点からも、事象として目にみえない「知覚」や「判断」の部分——言い換えれば、頭の中の部分——が重要だと言えるのです。

私がスペインにいたときの師匠である、アスレティック・ビルバオのランデルコーチはこう言っていました。 「サッカーは頭で始まり、足で終わる」

決して、「足で始まり、足で終わる」ではないのです。もちろん、フィジカルも重要ですが、〝頭′′をいかに使うかが最も重要なのです。

日本人の指導者が、今求められているのは、「知覚」「判断」といった〝頭′′の部分に、 実行(技術)をリンクさせることです。単純な「技術」の正確性を高めても、ヨーロッ パで活躍できる選手にはなれないでしょう。

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「サッカーがうまくなる」とは どういうことか?

情報処理スピードが高まること

本章も終盤をさしかかってきました。ここでは、サッカーがうまくなるとは具体的にどういうことなのか。私なりに考えてみたことを紹介します。

・できなかったことが、できるようになる。

・できることが、より(時間的に)早くできるようになる

サッカーのレベルが上がるということは、結局、より小さいスペース、より短い時間の中でもプレーできるようになることです。そのために、情報処理能力(=知覚+ 判断)と実行力(=インテンシティー含む)が高まることではないかと考えています。

情報処理能力が上がることを、元フットサル日本代表のミゲル・ロドリゴ氏は、

「i Phone3が、iPhone5になること」と表現していました(当時の最新版は、 iPhone5でした)。

今までよりも、スペースがない、時間がない、精神的にもプレッシャーを感じる状況を攻略していく。しかも、サッカーの中で、です。いわゆる〝素走り′′の練習の中には、

「いつ」「どこで」「なぜ」「何のために」「誰と」という戦術部分が含まれていないので、 いくら走り込んでもサッカー自体はうまくならないのです。

サッカーの中で変わらないものを意識する

サッカーには、トレンドがあります。そのときに勝者になったクラブ、あるいは国が先導するように、サッカーの流れを作っています。その中で、システムは変わり、戦い方も変化していきます。

2010年前後、FC バルセロナ、そしてスペイン代表が結果を出したことによって、ボールを持つことで主導権を握るサッカーが世界の中心になりました。その後、 こうしたサッカーに対抗するために、ハイプレッシャー、ショートカウンターを仕掛けるチームも増えてきています。すでに、バルサ自体もポゼッションだけではないスタイルになっています。

こうしている今も、トレンドは変わりつつあります。そして、現在12歳の子どもたちが大人になったときのサッカーは、今とはまた違う流れになっていることでしょう。 ということは、未来ある選手たちに現在の流行を教えることが、本当に適切なのでしょうか。今「ポゼッションが流行っている」「ストーミングのほうが効果的だ」と 言って、未来もそうであるとは限りません。

そう考えると、特に育成年代では、サッカーにおいて普遍的なことを伝えることが必要になります。つまり、国、クラブ、人種、カテゴリー、性別にかかわらず、「変わらないこととは、何なのか」を考える必要があります。それを教えられるかどうかが、 特に育成年代のコーチには大切だと思います。

大事なことは、より「長期」「広範囲」に渡って影響を及ぼすものを伝えていくこと です。長期というのは、イメージがつくでしょう。広範囲というのは、自分だけではなく、チームメイトやほかの選手、もっと言うと、地域にも影響を及ぼすものか、というのが一つの基準です。

例えば、ヒールキックを習得することと、正確なインサイドキックが蹴れるようになることでは、どちらが長期、広範囲で影響を及ぼすかと考えたら、答えは明確でしょう。であるならば、リフティングの回数と、状況をみて判断することは、どちらがより長期、広範囲に渡って影響を及ぼすものになるのか。この問いに対しても、答えははっきり出ると思います。

このような、変わらない大切な要素を表4-3にまとめたので、参考にしてください。

サッカーにおける 「大切な技術」とは?

この章では、サッカーとは何か、戦術とは何か、あるいは知覚や判断について話をしてきました。最後の項では、「技術」について考えてみましょう。

サッカーにおける「大切な技術」とはいったい何でしょうか。例えば、バルサの攻撃を牽引しているリオネル・メッシ選手と、すでに引退していますが、バルサの黄金期の最終ラインを支えたカルレス・プジョル選手のどちらが「技術が高いですか?」 と聞かれたら皆さんは、どのように答えますか?

例として、項目ごとに考えてみましょう。 「パス」「ドリブル」「シュート」「フェイント」「コントロール」……

では、次の項目はどうでしょうか。

「球際の戦い」「タックル」「ヘディング」「インターセプト」「スライディング」…… 何が言いたいかと言うと、「あの選手は技術が高い」と言うとき、ほとんどが「攻撃の技術のみ」を指していないか、ということです。そして、技術には、攻撃の技術も、 守備の技術もあるはずなのに、「技術=攻撃アクションだけ」という捉え方になっていないでしょうか。上述の問いであれば、ほとんどの人がメッシ選手の名を挙げるでしょう。でも、実は判断するのが難しいことにお気づきだと思います。

メッシ選手とプジョル選手の例は、当時のバルセロナのコーチングスクールで例として出されていました。ちなみに、当時のテストで、「自分なりの言葉で、技術を定義しましょう」という問題がありました。そのときに私が書いた答えは、こうです。

「チームの勝利のために考えられた戦術、イメージを遂行するための「道具」である」

皆さんも、「サッカー」「戦術」「技術」などについて皆さんなりの定義を考えて、言葉にしてみてください。SNSなどで「#サッカーの定義 #戦術とは? #技術とは?」と発信してくだされば、全力で探してフォローさせていただきます。

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